
先日棋聖戦5番勝負で渡辺明棋聖を破り、17歳11カ月で棋聖位の称号を獲得した「藤井聡太“新”棋聖」が、7月19日(日)に18歳の誕生日を迎えました。
プロ棋士にとって最大の栄誉であるタイトルを史上最年少でつかむ、というひときわ輝かしい記録を残した天才少年 藤井聡太棋士。改めて、これまでの彼の活躍と「天才」と言われる所以、そして先日獲得したタイトルのスゴさについて紹介します。
- 1 天才少年「藤井聡太棋聖」とは?
- 1.1 生い立ち
- 1.1.1 ■2002年(0歳)
- 1.1.2 ■2007年(5歳)
- 1.1.3 ■2010年(8歳)
- 1.1.4 ■2011年(9歳)
- 1.1.5 ■2012年(10歳)
- 1.1.6 ■2013年(11歳)
- 1.1.7 ■2014年(12歳)
- 1.1.8 ■2015年(13歳)
- 1.1.9 ■2016年(14歳2カ月)
- 1.1.10 ■2016年(14歳5カ月)
- 1.1.11 ■2017年(15歳)
- 1.1.12 ■2018年(15歳6カ月)
- 1.1.13 ■2018年(15歳9カ月)
- 1.1.14 ■2018年(16歳)
- 1.1.15 ■2019年(17歳)
- 1.1.16 ■2020年(17歳8カ月)
- 1.1.17 ■2020年(17歳11カ月)
- 1.1 生い立ち
- 2 藤井聡太棋聖の“天才ぶり”を物語る棋士たちの言葉
- 3 藤井七段から藤井棋聖へ。初タイトル獲得のスゴさとは?
- 4 18歳からピークに。天才少年 藤井聡太の時代は始まったばかり
天才少年「藤井聡太棋聖」とは?
「おおきくなったらしょうぎの名人になりたい」。6歳の誕生日、バースデーカードにそんな夢を書いた幼稚園児が、いま「藤井聡太棋聖」として将棋ファン問わず、多くの人を賑わせるプロ棋士となりました。「天才少年」はどのようにして生まれたのでしょうか。その生い立ちを遡ってみたいと思います。
生い立ち
■2002年(0歳)
2002年7月19日、愛知県瀬戸市生まれ。
父・母・兄の4人家族の次男として誕生。
■2007年(5歳)
祖母の勧めで将棋を始める。
■2010年(8歳)
アマ初段 東海研修会入会
※入会時は7歳
■2011年(9歳)
「小学生倉敷王将戦」
「将棋日本シリーズ こども大会 東海大会」で優勝。
■2012年(10歳)
研修会B1に昇級、6級でプロ棋士養成期間の奨励会へ入会。
■2013年(11歳)
4級~2級昇級。
■2014年(12歳)
初段に昇段【最年少】
■2015年(13歳)
三段に昇段【最年少】
■2016年(14歳2カ月)
14歳2ヵ月(中学2年)、将棋のプロ棋士への最終関門「奨励会三段リーグ戦」で13勝5敗という成績を残し四段昇段、プロデビュー【史上最年少】
■2016年(14歳5カ月)
2016年12月24日、当時現役最年長棋士の加藤一二三・九段(76)と対戦し110手で勝利。プロデビュー戦を白星で飾った【史上最年少】
■2017年(15歳)
デビュー戦から負け知らずの29連勝を達成【歴代最多記録】
通算50勝【史上最年少】
■2018年(15歳6カ月)
五段に昇段【中学生初】
六段に昇段【史上最年少】
■2018年(15歳9カ月)
七段に昇段【史上最年少】
■2018年(16歳)
新人王戦優勝【史上最年少】
■2019年(17歳)
史上初の3年連続勝率8割以上を記録。
■2020年(17歳8カ月)
4月、竜王戦ランキング戦で史上初の4期連続優勝。
■2020年(17歳11カ月)
第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負で渡辺三冠との死闘を制し、初タイトル「棋聖」を獲得。
藤井聡太棋聖の“天才ぶり”を物語る棋士たちの言葉
同業のプロ棋士たちも、藤井聡太棋聖の“天才ぶり”をさまざまな言葉で表現しています。
「まるで高速道路を静かに走っている車のような強さ」(北浜健介八段)
藤井聡太棋士が「29連勝」という、偉業を達成したとき、その5戦目に敗戦した北浜健介八段(41)は、この快進撃を「モンスター級の進化」と表現。さらに羽生三冠の中学時代を車にたとえて「羽生三冠の中学時代がデコボコ道を走る車だとしたら、藤井さんは高速道路を静かに走っている車という感じ」と語っています。
「天才という言葉を使わないのは難しい」(渡辺明三冠)
2017年7月、藤井聡太棋士の連勝記録が佐々木勇気五段(現七段)に敗れ、29で止まった直後、渡辺明三冠は彼をこのように語っていました。
「天才という言葉を使わないで藤井君について説明するのは難しいと思います。いちばん若くして棋士になって、勝ちっぷりが普通じゃない。大棋士になる条件は当然満たしていますよね。買うなら『数十年に1人の天才』というオッズが人気になるのは当然です」。
「オバケですよ。オバケの聡太郎ですよ。ほんとに。」(豊川孝弘七段)
豊川孝弘七段は、「文春オンライン」のインタビュー(2019年4月)で、「藤井聡太はこれからもどんどん強くなると思いますか?」という質問にこのように答えていました。
「見ていて震えた。『完勝』という一語で表現しきれない、藤井七段の勝ち方だった。」(飯島栄治七段)
2020年6月、藤井聡太棋士が渡辺明棋聖を90手で下し、2連勝した際にその様子を現地で観戦していた実力派棋士、飯島栄治七段は「恐ろしいまでの完勝だった」と絶賛していたそうです。
藤井七段から藤井棋聖へ。初タイトル獲得のスゴさとは?
プロ棋士になると、誰もが目指す8つのタイトル戦(竜王戦、名人戦、叡王戦、王位戦、王座戦、棋王戦、王将戦、棋聖戦があり、通称「8大タイトル戦」と呼ばれる)。タイトル保持者と挑戦者が、5番勝負または7番勝負で優勝を争うプロ公式戦です。
棋士の肩書きは通常は段位(6級〜九段の15階級)となりますが、タイトル保持者の場合は、「○○竜王」というようにタイトル名が肩書きとなります。
そんな名誉あるタイトルを、わずか17歳11カ月という若さで獲得した藤井聡太棋聖。これまでの最年少記録だった屋敷伸之九段の18歳6カ月を、30年ぶりに更新したのです。
これで藤井聡太棋聖の序列は、豊島将之竜王・名人、永瀬拓矢2冠、渡辺明2冠、木村一基王位に次いで棋界5位に。上位3人以外と対局する場合は、原則的にすべて上座に着くことになります。
他棋戦での予選などはシードされ、イベント出演時はタイトル保持者としての特別報酬があり、交通機関の座席などの待遇も変わってくるのです。
18歳からピークに。天才少年 藤井聡太の時代は始まったばかり
先日、初タイトルを獲得したばかりの藤井聡太棋聖ですが、早くも彼は次の戦いに目を向けています。8月4、5日に控えている王位戦第3局で、2冠への王手を一気に目指すそうです。
初タイトル獲得時のインタビューでは「18歳から25歳が流動性知能(思考や計算などの能力)のピーク。羽生先生が7冠を達成されたのは25歳の時です。私も18歳からピークを迎えると思います」と語っていました。
さまざまな最年少記録を達成してきた藤井聡太棋聖の快挙は、これから生み出される伝説の序章に過ぎないのかもしれません。まさに、誰も見たことのない「藤井聡太の時代」が始まろうとしています。