
流れ星のように、空に長い尾を描く彗星。その姿がほうきの形のように見えることから日本では「ほうき星」の名で親しまれています。
彗星は1年を通じて30個程度見られると言われていますが、そのほとんどは大きな望遠鏡を使って写真を撮らないと分からないほど暗いものばかり。
そんな彗星ですが、天文学者から「ここ10年あまりで最も明るい彗星になるかもしれない」と期待されているのが、ネオワイズ彗星(C/2020 F3、NEOWISE)です。
7月はそのネオワイズ彗星が地球に最も接近することから、日本でも見ごろを迎えています。すでに各地域で観測されているようですが、ここでは東京から観察できる方角や時間についてご紹介したいと思います。
ネオワイズ彗星とは
ネオワイズ彗星は、3月28日(日本時、世界時では3月27日)に赤外線探査衛星により発見されました。
その探査衛星の名前が「 Near-Earth Object Wide-field Infrared Survey Explorer」という名前だったことから、その頭文字を取って“NEOWISE(ネオワイズ)”と名づけられたそうです。
明るさは約1〜2等級(※等級は星の明るさを観単位で数字が小さいほど明るく、大きほど暗い)と同等レベル。
米アリゾナ州ペイソンの天体写真家クリス・シューア氏は、ネオワイズ彗星の尾の長さを、満月の見かけの大きさの約10倍である5度程度と見積もり、このまま順調に尾が伸びていけば「とてもドラマチックなことになるでしょう」と語っているそう。
7月4日(日本時、世界時では7月3日)に太陽に最も接近し、7月22日には地球に最接近すると予想されています。
国立天文台によると、このネオワイズ彗星が次に太陽に近づくのは5000年以上先になるということです。
東京でネオワイズ彗星が見られる方角は?
7月後半は、夕方の低い北西の空にネオワイズ彗星が見えるようになります。
夕方の空では、日を追うごとに地平線からの高度が高くなり、見やすい位置になりますが、明るさは7月末に向けて徐々に暗くなっていくため、できるだけ早めの観察がおすすめです。
下記の方角を参考にしてみてください。
日付 | 時間 | 方角 | 地平高度 | 明るさ | 尾の方向 |
7月22日頃 | 19:53頃 | 北西 | 約20度 | 約3等 | 右上側 |
7月25日頃 | 19:51頃 | 西北西 | 約30度 | 約4等 | 上側 |
7月30日頃 | 19:47頃 | 西北西 | 約36度 | 約5等 | 上側 |
(参照)大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台 公式サイト
※彗星の明るさを正確に予想することは難しいため、上記よりも明るく見えたり、暗く見えたりすることがあります。
※彗星の等級は、同じ等級の星より暗く感じられることがあります。
東京は梅雨時期というのもあり、お天気は7月26日まで雨または曇りの予報ですが、日の入りのタイミングで奇跡的に晴れ間が見られる可能性も。根気よく空を眺めてみてくださいね。
ネオワイズ彗星を観察するときのポイント

「ここ10年あまりで最も明るい彗星」と聞くと、図鑑で目にするような立派な姿を期待してしまうかもしれませんが、実際のところ肉眼では淡くぼんやりとして見えます。
なので市街地のような場所では、空の明るさにまぎれてしまって、肉眼ではとても見えづらい状態になってしまいます。また、薄雲やもやがある空の場合も同様です。
とはいえ、都内で明かりがない場所を探すというのも難しいですよね。そのような場合は、ぜひ双眼鏡を使ってみてください。ちなみに双眼鏡で探すときには、上の表で彗星の見える方角や地平線からの高度をしっかりと確認しましょう。
カメラをお持ちの方は、三脚を使用するとブレずに撮影することができますよ。夜景モードなど、暗いものが写りやすい設定でぜひチャレンジしてみてください。
肉眼で見えない場合でも、写真に写っているケースが稀にあります。例え見られなかったとしても気を落とさずに、カメラのデータを確認してみてくださいね。
見られると良いことがあるかも? 祝福の星「彗星」を観察してみよう
彗星は遠いところから回ってくるため、一生のうちで一度しか見られない彗星も珍しくありません。
そのようなことから、76年に一度見られるという「ハレー彗星」は、かつて「勝利を祝福する星」としても迎えられていたそうです。
今回のネオワイズ彗星も次に見られるのは、5000年以上先だと言われています。見られると良いことがあるかも?
ぜひ「ほうき星(彗星)」を探しに、夏の夜空を見上げてみてくださいね。