
2020年12月8日、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの調査を終え帰還。地球に届けられたカプセルには、リュウグウの物質が含まれており、地球の起源を探るための大きな第一歩となることが期待されています。
でもこのはやぶさ2、一体どのくらいすごいことを成し遂げたのでしょうか。
正直「宇宙に行ったのはすごいけど、ロケットなら今までいくつも飛んでいるでしょ?」と思っているそこのあなた! 実ははやぶさ2って本当にすごいことを成し遂げたんですよ!
今回は、そんな「今更聞けないはやぶさ2のすべて」をバッチリまとめました!
はやぶさ2のミッション、その旅路、世界の反応、そしてこれからのミッションについて、ぜひご覧ください。
小惑星探査機「はやぶさ2」とは
はやぶさ2は、世界ではじめて小惑星の物質を持ち帰った「はやぶさ」の後継機。その目的はC型小惑星「リュウグウ」の探索と、惑星内部の物質の収集および地球への帰還です。
小惑星リュウグウとは
リュウグウは太陽を1年3カ月かけて回る小惑星で、地球同様に太陽系の小惑星。直径はおよそ900メートル程度と非常に小型です。
太陽系が誕生した46憶年前と同じ姿のまま現在も存在しているため、地球を生き物の楽園にしたきっかけとなる有機物が保有されているのではないかと予想されています。
はやぶさ2の旅路

無事に地球への帰還を果たしたはやぶさ2ですが、実はその旅のはじまりは6年前までさかのぼります。
■2014年12月3日:宇宙へ出発
2014年12月3日に種子島宇宙センターを出発したはやぶさ2。その後は地球と並走する形で約1年間の助走期間に入ります。スイングバイといわれるこの期間で、はやぶさ2はリュウグウに近付くための軌道修正と加速を行いました。
■2018年2月:リュウグウの撮影に成功
その後、エンジンの出力を調整しリュウグウの高度130万キロ地点に到達したのが2018年2月。初めて「リュウグウ」の撮影に成功します。
■2019年2月:リュウグウの着陸に成功
リハーサルを繰り返し、2019年2月にはリュウグウへの着陸に成功。この時、リュウグウ表面の石や砂など物質の採取にも成功したようです。
■2019年4月5日:世界初!人工のクレーターをつくる
金属の塊を発射する装置「インパクタ」を切り離し、「リュウグウ」へ秒速2キロの高速で金属の塊を発射。計画通りに衝突させ、世界で初めて小惑星に人工のクレーターをつくることに成功。
■2019年11月:リュウグウを離れ、地球へ
その後、はやぶさ2はリュウグウ表面にクレーターを生成、惑星の物質を採集し地球に向けて帰還。2019年11月のことです。
■2020年12月8日:はやぶさ2無事帰還!ミッション達成
そしてついに2020年12月5日、はやぶさ2は地球に向けてリュウグウのサンプルの入ったカプセルを射出。オーストラリア南部ウーメラ地区の砂漠で回収されたカプセルは、12月8日、無事にJAXA相模原に届けられました。はやぶさ2の壮大なミッションが達成された瞬間です。
はやぶさ2は何がスゴいの?
はやぶさ2の旅路が長く、大変だったことはわかっていただけたかと思いますが「小惑星のサンプルを持って帰ってくること」は、どれだけすごいことなのでしょう。
「ただの宇宙の石じゃね…?」という疑問にばっちりお答えします!
地球の起源に迫る研究の第一歩
今でこそ地球は「水と生命の惑星」ですが、46憶年前はマグマに覆われ、小惑星が降り注ぐ「死の惑星」でした。これは、地球が太陽系において「スノーライン」と呼ばれる境界の内側にいることに起因します。
スノーラインとは太陽からの距離による水の状態を表す境界で、この内側では水は蒸発し、外側では氷になるという現象を示すものです。
岩石惑星である地球はスノーラインの内側にいるため、本来水に覆われた惑星にはなれません。しかし、スノーラインの外側から降り注ぐ「水を持った小惑星」が衝突を繰り返すことで、地球は水の惑星になることができたのです。
はやぶさ2が調査を行った小惑星リュウグウは、46億年前の地球に降り注いだ小惑星と同じ状態を保ったままだと予想されています。
つまり、リュウグウの物質を調べることで「地球の水や有機物の根源」が特定できるかもしれない、地球の神秘に科学が近づく大きな一歩なのです!
惑星内部の物質を採取
世界的に大きな話題となった初代はやぶさ。はやぶさは小惑星イトカワで地表の物質を採取することに成功しましたが、はやぶさ2ではその上をいく技術が用いられました。
インパクターという装置で人工的に小惑星にクレーターを作り、地表ではなく惑星内部のサンプルを採取する仕組みが取り入れられています。この技術により、小惑星の構成物質をより純粋に調査できるようになりました。
驚異のコントロール
はやぶさ2の総飛行距離は52億4千万キロメートル。約6年間もの間宇宙で活動をしていたことになります。想像もできないほどの時間と距離ですが、恐るべきは「直径900メートルほどの目標に正確にたどり着く遠隔操作技術」です。
その調整は困難を極め、2018年当時には「日本からブラジルにある直径6センチの的を正確に狙うほど」と例えられたほどです。
とんでもない技術ですね!
はやぶさ2が達成した7つの世界初
宇宙調査の範疇において世界をリードする存在となったはやぶさ2の偉業は、7つの世界初を達成しました。それは以下の通りです。
- 小型ロボットを使用した小天体表面の移動調査
- 複数のロボットの投下・展開
- 天体着陸精度60センチを実現
- 探索機1機で複数地点を調査
- 人口クレーターの作成およびその経過観察
- 地球圏外小惑星の地下物質を地球に投下
- 最小かつ複数の小天体周回人工衛星の実現
内容を見ると、今回はやぶさ2が成し遂げたことはほぼすべて世界初だったということがよくわかります。
「はやぶさ2」国内・海外の反応
人類史における偉業を成し遂げたはやぶさ2に向けて、世界中から賞賛の声が集められています。
オーストラリアの新聞ではやぶさ2のカプセル回収が一面に。
かプセルが着陸したオーストラリアの方々をはじめ、世界から多数SNSで祝福の言葉がはやぶさ2に向けられています。
宇宙飛行士の野口聡一さんも、はやぶさ2の帰還を祝福していました!
首相官邸からもお祝いの言葉が。
はやぶさ2の帰還を心待ちにしていた方も、無事に届けられたカプセルに一安心していることでしょう。
はやぶさ2の次なるミッション

6年にもわたる調査を終え、無事に地球にカプセルを届けたはやぶさ2。ついつい「おつかれさま!はやぶさ2!!」と声をかけてあげたくなるところですが、実はもうはやぶさ2は次なるミッションに挑戦しているのです。
見習いたいくらい働きものですね。
次のターゲットは直径30メートル!?
地球にカプセルを投下したはやぶさ2は、そのまま地球から離れていきました。
そして、次なるターゲットは地球と火星の間を回る小型の小惑星「1998 KY26」。なんと直径30メートルとリュウグウよりはるかに小さく、約11分間に1回自転をする超小型の小惑星です。
実は、初代はやぶさも1回目の調査の後にそのまま別の惑星の調査に向かう計画が立てられていました。しかし、度重なるトラブルに満身創痍だった初代はやぶさは、大気圏突入で焼失すべきとの判断が取られ、本体がばらばらになりながら溶融消滅しています。
はやぶさ2では、初代はやぶさが成し得なかった次なる目標を達成するべく、さらなる宇宙の旅に向かいます。
調査終了は2031年!!
次なる小惑星の調査が完了するのはなんと11年後の2031年!はやぶさ2は宇宙で17年も活動を続ける予定です。これは活動限界を超えた調査になる予定なのだそう。
地球に貴重な「お土産」を持ってきてくれたはやぶさ2。今後の活躍も大いに期待しましょう!