
サステナブルシーフードとは

世界で徐々に広がりを見せているサステナブルシーフード。「世界の魚を食べつくす」と言われている日本人にとって見過ごせない活動です。
サステナブルシーフードとは、環境負荷の高い漁業を避けて獲得されたシーフードに与えられる認定のようなもの。国際連合が推進するSDGs(持続可能な開発目標)のひとつにもかかわりのある活動になっています。
SDGs(持続可能な開発目標)とサステナブルシーフードの関係

photo by 国際連合広報センター
- SDGsとは
- SDGs(Sustainable Development Goals)とは、国連サミットで採択された国際的な目標のことで、主に「地球環境の保全と利用のバランス」を保つために17個のゴールを掲げています。
17のゴールをそれぞれ見てみると、1~6は「貧困・飢餓・健康と福祉・教育・男女平等・衛生」と、生活の質にかかわる部分が多く、主に発展途上国の課題に向けた内容のものが多い印象です。
7~12のゴールでは「エネルギー・経済成長・産業・国際的な不平等・住環境・持続可能な未来」と広く先進国にも当てはまるないようの課題が並びます。
13~17では「気候変動・海洋環境・土壌環境・平和・協力」と、地球規模での目標が並んでいます。国家間での協力がなければ達成しないような課題も、SDGsには含まれているということです。
サステナブルシーフードは、海洋環境の保全という観点から、このSDGsのゴールにかかわってきます。
具体的には、17個のゴールのうちの14番目「海の豊かさを守ろう」がサステナブルシーフードの範疇です。環境負荷の高い漁業や養殖を行っていない海産物に認証が与えられるのもそのためです。
サステナブルシーフードにはASCとMSCの二つの認定資格があり、このどちらかを得た海産物がサステナブルシーフードとして認められます。
サステナブルシーフードに必要な認定資格
サステナブルシーフードにはASCとMSCの二つの区分で認定資格があります。この二つは、天然と養殖の部門に別れた資格となっています。
MSCは天然の海産物にかかわる認定資格で、海洋環境に負荷をかけていない漁業によって獲得されたものである証明です。
対してASCは、養殖の海産物にかかわる認定資格です。こちらもASC同様、海洋環境に負荷をかけていないことが認定資格を得る条件となっています。
さらに、ASCやMSC認証を受けた漁業・養殖業者が獲得した海産物がASC、MSC認証を得た海産物として私たちの食卓に並ぶために必要な認証があります。それがCoC認証と呼ばれるものです。
このCoC認証とは、海産物の加工業者に与えられる資格で、CoC認証を持つ加工業者は、 ASC、MSC認証を得た海産物と、それ以外の海産物が混ざることのないように、仕入れルートのトレーサビリティを確保しているという証明になります。
こういったルートを経て、ASC、MSC認証を得た海産物が私たちの食卓に届けられているのです。
参考URL:Marine Stewardship Council
(https://www.msc.org/jp/)
養殖での認定証ASC

養殖で海洋環境に影響が出るとはどういうことなのでしょうか。 養殖において問題となるのは、以下のようなケースです。
- 大量養殖における海洋環境の悪化
- 餌となる天然魚の大量消費
- 養殖魚脱走における生態系への影響
このように、決して乱獲漁業ではなくとも、海の保全にかかわる問題はあるのです。
ましてや、現在の水産物の半数以上は養殖でまかなっている状態ですので、このような養殖にかかわる認証も非常に大切です。
現在では、日本でもこのASCを取得している養殖業者が出始めています。例えば、宮城県漁業組合のカキ養殖、世界ではじめてブリのASC養殖認証を得た黒瀬水産。サステナブルシーフード後進国と言われる日本でも、徐々に認証を得た業者が増えてきています。
参考URL:ASC
(https://www.asc-aqua.org/ja/)
日本でASC認定された業者
現在、日本では69養殖場(13件)がASC認定を受けています。現在審査中の養殖場も2つあり、今後の発展が期待されています。
養殖の種類では、カキやカンパチ、ブリなどの食卓に並ぶことの多い魚介類などがラインナップ。めずらしいところでは、ミドリムシとして知られる微細藻類ユーグレナがASC認証を受けています。
取得順 | 養殖場数 | 生産企業・漁協 | 所在地 | 魚種 | 認証状態 |
1 | 5 | 宮城県志津川両漁協戸倉 | 宮城県 | 牡蠣 | 取得 |
2 | 3 | 黒瀬水産 (日本水産) | 宮崎県 | ブリ | 取得 |
3 | 1 | グローバルオーシャンワーク | 鹿児島県 | ブリ | 取得 |
4 | 50 | 宮城県漁業協同組合 石巻地区支所・石巻湾支所・石巻市東部支所 | 宮城県 | ブリ | 取得 |
5 | 1 | アクアファーム(マルハニチロ) | 大分県 | ブリ | 取得 |
6 | 1 | ユーグレナ | 沖縄県 | ユーグレナ | 取得 |
7 | 1 | 鹿児島県東町漁協 | 鹿児島県 | ブリ | 取得 |
8 | 1 | 奄美養魚(マルハニチロ) | 鹿児島県 | カンパチ | 取得 |
9 | 1 | ジャパンサーモンファーム | 青森県 | ニジマス | 取得 |
10 | 1 | 遊佐試験場(マルハニチロ) | 山形県 | サクラマス | 取得 |
11 | 1 | FRDジャパン | 千葉県 | ニジマス | 取得 |
12 | 1 | マルキン | 宮城県 | 銀鮭 | 取得 |
13 | 1 | ダイニチ | 愛媛県 | マダイ | 取得 |
14 | 2 | 弓ヶ浜水産株式会社 | 鳥取・新潟 | 銀鮭 | 審査中 |
天然の認定証MSC

photo by Marine Stewardship Council
「海のエコラベル」とも呼ばれるMSCは、天然の海産物に与えられる認定証です。
このMSCの重要なポイントは「自然界で生まれ育つ海産物の量を超えて海産物を獲得しない」部分です。
そのために、海産物の種類に応じて、獲得してよい量や時期などを細かく定め、このルールにのっとって漁業を行うことによってMSCの認定証がもらえるという仕組みになっています。
海産物の乱獲は、続ければ海の生態系が崩れて環境の悪化につながります。SDGsの観点からも、非常に大切な取り組みです。
参考URL:Marine Stewardship Council
(https://www.msc.org/jp/)
日本のMSC認定された業者
取得年 | 生産企業・漁業 | 取得漁業 |
2013年 | 北海道漁業協同組合連合会 | ホタテガイ漁業 MSCプレスリリース |
2016年 | 明豊漁業株式会社 | カツオ・ビンナガ一本釣り漁業 MSCプレスリリース |
2019年 | 石原水産株式会社 | カツオ・ビンナガ一本釣り漁業 MSCプレスリリース |
2019年 | マルト水産株式会社 | 垂下式カキ漁業 MSCプレスリリース |
2020年 | 株式会社臼福本店 | タイセイヨウマグロはえ縄漁業 MSCプレスリリース |
2021年 | 尾鷲物産株式会社 | ビンナガマグロ・キハダマグロ・メバチマグロ漁業 MSCプレスリリース |
流通・加工・販売の認定証CoCとは
MSC・ASC認定を得た海産物であっても、認定外の海産物と同じ工場や加工場で処理をされてしまえば、せっかくの認定も意味がありません。
そこで登場するのが、流通や加工、販売ラインでの認定にあたるCoC認証です。
CoC認証では、MSCやASC認証を持つ漁業者から得た海産物が、非認証の海産物を交わらないように、しっかりと海産物の仕入れ先を追える仕組みと管理体制を持った業者に認定がおりる仕組みになっています。
漁や養殖などの獲得にかかわる認証であるMSC・ASCに対し、流通・加工・販売にかかわる部分を担っているのがCoC認証です。
このMSC・ASC認証とCoC認証がきちんと守れられることで、私たちの食卓までサステナブルシーフードが届けられています。
日本では、大手スーパーを運営するイオンリテール株式会社や、コープで知られる日本生活協同組合連合会など、大手の企業がCoCを取得しています。
サステナブルシーフードの取り組み
日本のCoC認定を受けた企業では、どのような取り組みをしているのでしょうか。
イオンリテール株式会社:サステナブルシーフードを店舗とネットで啓蒙
大手スーパーAEONを運営するイオンリテール株式会社では、「フィッシュバトン」コーナーを設け、ASC・MSC商品だけをピックアップした売り場展開を行っています。
また、ECサイトでもMSC・ASC特集ページを作成し、サステナブルシーフードを世に広く伝える役割を担っています。
日ごろから利用できるスーパーでもサステナブルシーフードが入手できますので、ぜひお近くのトップバリューで!
日本生活協同組合連合会(CO-OP):認証商品を一覧で閲覧できるページを作成
日本性格共同組合連合会では、商品としてMSC・ASCラベルのついたものを扱い、サイト上で該当商品をひとまとめに見れるようにしてあります。
また、認証ラベルについての説明もされているため、サステナブルシーフードについての知識がない方の「知るきっかけ」にもなっています。
パナソニック株式会社:社員食堂でサステナブルシーフードが食べられる
一見サステナブルシーフードに縁のなさそうなパナソニックですが、しっかり認証を受けている企業です。
認証の理由はパナソニックの社員食堂に使われる食材がサステナブルシーフードを使用しているため。毎日の昼食にサステナブルシーフードに触れることで、自然と海の環境を守ることに意識を向けられるという効果が期待できます。
まだまだ日本では浸透していないサステナブルシーフードの存在を広く伝えるユニークな活動です。
サステナブルシーフードウイーク
サステナブルシーフードの認知度をアップする活動として、2014年から行われているサステナブルシーフードウイーク。
毎年様々な角度からイベントが開催されていますが、2020年は「自宅で楽しむサステナブルシーフード」というテーマで、スープ作家の有賀薫さんによるMSC・ASC食材を使用したスープを作ってSNSにアップしよう!というイベントが開催されました。
抽選でMSC・ASCのキッチングッズが当たるということもあり、多くの人がSNSでサステナブルシーフードの料理写真をアップしていました。
今後ますます盛り上がりをみせていくであろうサステナブルシーフードの世界、2021年のサステナブルシーフードウイークも楽しみですね!