SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」 | 現状とその取り組み・私たちにできること

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」 | 現状とその取り組み・私たちにできること

2015年の国連サミットで掲げられた国際社会における共通の目標であるSDGs。2030年までに持続可能な社会をつくりあげ、誰一人として取りこぼさないというテーマで様々な視点から達成すべくまとめられています。

SDGsは17の目標と169のターゲットに分類されますが、今回はその中のSDGs目標16「平和と公正をすべての人に」について、詳しく説明をしてみたいと思います。

人類がみな平和に暮らすという「当たり前のようで難しい問題」について、一緒に考えてみましょう。

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」とは?

SDGs目標16の概要は「持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」と記されています。ちょっと難しいので分解して理解をしてみましょう。

「持続可能な開発」とは、人間の生活が科学的に進歩し便利になることと、地球環境や社会がダメージを負わない形で次世代につなげられるということです。地球を守って人も便利に、ということです。

「平和で包摂的な社会」についてです。平和とはそもそも、人が人としてあるべき権利を持っていて、不平等や社会的暴力にさらされていない環境のことです。「包摂的」とはすべての人を含むということ。つまり「みんなが平和に暮らせる社会を作ろう」ということです。誤解しがちですが、平和とは「戦争のない状態」ではないので注意が必要です。

「司法へのアクセス」「効果的で責任のある包摂的な制度」は少し難しい言葉ですね。ざっくり言ってしまえば、すべての人が司法によって守られている状態にいられるようにしましょうね!ということです。

まとめると、SDGs目標16は「すべての人が差別や暴力にさらされない平和な状態にあり、かつ司法によって守られている状態を目指す」ということになります。

SDGs目標16のターゲット

人間が平和な状態にいないと、著しくその人の生命が危機に晒されてしまうことになります。SDGs目標16のターゲットは、こういったリスクから人間を守るべく、明確なターゲットを定めています。

目標は16.1~16.10にナンバリングされた課題と、16.aと16.bのふたつの具体的手段の全12個。それらは以下の通りです。

項目内容
16.1あらゆる場所において、全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
16.2子供に対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
16.3国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、全ての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
16.42030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16.5あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.6あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.7あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
16.8グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16.92030年までに、全ての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
16.10国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
16.a特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
16.b持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。

16.平和と公正をすべての人に | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)

暴力による被害の根絶、人権を無視して人を扱うこと、違法な武器調達の廃止といった直接的に人命を危機に晒す原因となるものを排除するための目標が前半に並びます。

後半では透明な政治を行うための目標が並んでますね。強権的な社会を作ってしまわないためには、司法のバックボーンも大切になってきます。すべての人が司法のもとに平等に、公平に扱われる基盤が必要です。

a,bの具体的な手法では、国際的な視点での活動の大切さが述べられています。比較的法規がまとめられている国が発展途上国を支援し、世界に平和の輪を広げていく活動が求められます。

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」が必要な理由と現状の課題

SDGs目標16はなぜ必要なのでしょうか?その理由は簡単です。残念ながら、世界は思っているほど平等で平和ではないからです。

事実、今も世界には多くの差別や暴力、紛争が存在しています。これは人が健やかに生活していくためにも早急に解決をしなくてはいけません。SDGs目標16はこれらの問題を世界中から根絶するためのベースとなる思想でもあるのです。

まずは、今世界が抱える平和への課題として、現状を把握してみましょう。

さまざまな平和への課題

世界的に見ても指折りで平和と言われる日本に住む私たちにはイメージしづらい問題ですが、世界では平和を脅かす危機的な状態に直面している地域が多数あります。例えば、紛争・戦争・犯罪・災害などがそれにあたります。

それ以外にも、最近なにかと話題にあがるLGBTといった性的マイノリティーの方に対する理解にまつわる問題など、精神的な問題も山積みです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

紛争と災害、難民

世界では今、約2億4600万人もの子どもが紛争や戦争といった争いごとに巻き込まれ、家族を失ったり、怪我をしたり、最悪その命を失ったりしています。

また、紛争などによって世界の人口の約1%、7950万人もの人が難民となり、住む場所を追われてしまっています。特に、もう10年以上も内戦状態が続いているシリアでは、多くの人が難民として国外に避難をしなくてはいけません。

このような悲しい事態をなくしていくためにも、SDGs目標16の定める平和は早急に実現しなくてはいけないものなのです。

出生登録がされない子どもたち

出生登録とは、赤ちゃんが生まれた際に自治体などに届けを出して行う登録です。出生登録によって、新生児は基本的な人権を持ち、司法の庇護の下安心して成長することができます。これがSDGs目標16における「司法に守られる」状態です。

しかし、世界ではいまだ5歳未満の子どものうち4人に1人は出生登録がされていない状態であるのです。とくにアフリカの一部地域ではこの兆候が顕著で、そもそも出生登録という仕組みを知らなかったという親も多く存在をしています。

出生登録がされていない子どもは、司法の概念においてはこの世界に生れ落ちていないことになってしまい、人権を守ることが難しくなります。だからこそ、世界中の人すべてが出生登録をすることは、SDGs目標16の達成において非常に大切です。

LGBTへの差別

最近よく話題に上がるようになったLGBTですが、これは「レズビアン(女性同性愛者)」「G=ゲイ(男性同性愛者)」「B=バイセクシャル(両性愛者)」「T=トランスジェンダー(心の性別と体の性別の不一致)」の頭文字を取って作られた概念です。

こういった性的マイノリティの人に対する差別や偏見はいまだに根強く、好奇の目や差別的な発言がなかなかなくなりません。多くの性的マイノリティの人が、LGBTであることを隠し、窮屈な思いをしながら多感な青春時代を生き抜いています。

LGBTへの偏見は、言い換えるならば「差別」そのものです。差別は紛争のきっかけにもなります。SDGs目標16の達成のためには、こういった差別もなくしていかなくてはいけませんね。

各国で行われているSDGs目標16への取り組み

世界を平和にするという大きな目標を達成するために、世界ではどのような取り組みがなされているのでしょうか。

代表的な平和を守る組織として、国連平和維持活動(PKO)は有名です。PKOは、紛争の沈静化と再発防止のための活動を行う団体。PKO自体は軍隊を持たない組織のため、実際の紛争沈静化の際は加盟国から軍事力と費用を捻出し、世界平和を守るために活動しています。

SDGs達成度世界No1のフィンランドでは、SDGs目標16達成に向け、ネウボラという活動を行っています。ネウボラは母親の妊娠時から就学前までの期間に担当の保健師が付き、様々な問題にワンストップに対応する制度です。

これによって、フィンランドでは虐待率が大幅に減少し、子供の人権がより強く守られるようになりました。また、ネウボラを行うために必要な資金は虐待が起こってしまったケア費を下回っているため、持続可能な社会という意味でも効果的な取り組みだと言えます。

日本の企業によるSDGs目標16への取り組み事例

私たちの住む日本は世界的に見ても平和な国と言えますが、先にも述べた通り、平和とは別に戦争や紛争がないことだけを意味しているわけではありません。また、世界にSDGsの大切さを広めていくためにも恒久的な活動は欠かせません。

ここでは、SDGs目標16の達成のために日本の企業が行っている活動を見ていきましょう。

「ヤマハ株式会社」のSDGs目標16への取り組み事例

「ヤマハ株式会社」のSDGs目標16への取り組み事例

photo by サステナビリティ – ヤマハ株式会社

楽器メーカーのトップ企業として名高いヤマハ株式会社。「感動を・ともに・創る」を企業理念として掲げ、音楽を通じて人々の豊かな生活を作ることを目標としています。

そんなヤマハ株式会社の音楽メーカーならではのSDGs目標16に関わる活動をご紹介します。

  • 新興国を中心に実施する音楽体験プログラム
    「ヤマハ音楽教室」で得たノウハウを新興国に横展開した「スクールプロジェクト」で楽器に触れる機会に恵まれなかった子どもに音楽体験を提供。最終的には世界の子どもたちが等しく音楽体験の機会に恵まれることを目標にしています。
社名(商号)ヤマハ株式会社 (Yamaha Corporation)
本社所在地静岡県浜松市中区中沢町10番1号
事業内容楽器事業・音響機器事業・その他
公式サイトhttps://www.yamaha.com/ja/

「株式会社Kaien」のSDGs目標16への取り組み事例

「株式会社Kaien」のSDGs目標16への取り組み事例

photo by 株式会社Kaien

株式会社Kaienは発達障害の人たちに職業支援を行うために設立された企業。最も難しい障害と言われる発達障害の人たちに社会で活躍する機会を与えるべく、日々活動をしています。Kaienの行う発達障害の人たちに向けた支援サービスは以下の通りです。

  • 発達障害に特化した就労支援事業と学習支援
    発達障害の人の持つ特性を生かし、活躍できる環境を与えようという理念のもと行われる株式会社Kaienのメイン事業です。発達障害の人は、社会で際立つ個性を持っているためアジャストしづらいと思われがちですが、集中力の高さなど類まれなる能力も持っています。株式会社Kaienでは、発達障害の人の持つ人に学習や職業訓練の機会を与え、自尊心や経済的安定を得てもらうための支援を行っています。
社名(商号)株式会社Kaien
本社所在地静岡県浜松市中区中沢町10番1号
事業内容発達障害(広汎性発達障害、ADHD、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群等)の方に特化した 1. 人材サービス事業(人材紹介、人事コンサルティング)blank_blue 2. 就労支援事業(大人の発達障害者向け「就労移行支援事業」「自立訓練(生活訓練)事業」blank_blue、学生向け「ガクプロ」blank_blue、相談支援事業blank_blue) 3. 教育事業(お子様向け「TEENS」blank_blue) 4. その他 (啓発事業など)
公式サイトhttps://corp.kaien-lab.com/

「薬樹株式会社」のSDGs目標16への取り組み事例

「薬樹株式会社」のSDGs目標16への取り組み事例

photo by SDGsへの取組み | 薬樹株式会社

薬樹は薬局などを運営する企業で、「健康な人、健康な社会、健康な地球」をテーマに、日々街の人たちに頼られる薬局運営を行っています。一見、SDGs目標16とはあまり関係の深くなさそうな企業ですが、企業理念からもわかる通り、薬樹はそもそもSDGsの考え方に近い考え方を持っている会社です。目標16にかかわる活動もしっかり行っていました。

  • リユースで得た金銭を支援団体に寄付
    まだ着続けられる洋服を回収してリユース業者に売却し、その収益を支援団体に寄付しています。寄付された収益は紛争に巻き込まれているアフリカの子ども兵の社会復帰支援や、地雷除去のために使用されています。
社名(商号)薬樹株式会社
本社所在地神奈川県大和市西鶴間1丁目9番18号
事業内容薬局運営・その他
公式サイトhttps://www.yakuju.co.jp/

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」に対して私たちができること

SDGs目標16について私たちが出来ることはなにかあるのでしょうか。世界平和や紛争の解決などは、一般人である私たちには到底力になることができない問題のように感じますよね?

ですが、見方を変えれば私たちにもできることはたくさんあります。ここでは、今日からでもできる簡単なSDGs目標16なアクションをご紹介していきたいと思います!

難しく考えず、気楽に参加できる内容ばかりですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

積極的に政治へ参加を。選挙で投票する

なぜ政治?と思われるかもしれません。ですが、投票という行為は私たち一般市民に与えられた大切な参政権であり、これをないがしろにすることは、民主主義の仕組みや世の中の在り方に対する放棄でもあります。

皆さんもご存じの通り、日本人の投票率はそれほど高い数値ではありません。例えば、令和元年の参院選の投票率は51.77%、ほぼ半数の人が投票をしていないのです。

政治に関心を向けないとどうなるでしょうか。為政者は票をくれる人に向けた公約や政治理念を掲げ、結果誰にとっても公平な社会の実現から一歩遠のきます。

政治のすべてを知れ!とまでは言いませんが、自分がどのような人に政治を担ってほしいかしっかりと考え、まずは選挙に行き、貴重な一票を投じることでSDGs目標16「平和と公正をすべての人に」を実現しましょう!

身近にある価値観の違いや多様性を受け入れる

多様性という言葉をご存じですか?

多様性とは、幅広く性質の異なるものが存在するという意味ですが、これを人に当てはめると、人種や思想、性質や価値観など、様々な違いのことを指します。

近年、この多様性を受け入れる、理解するということが一つの世界的なテーマになっています。実際、東京オリンピックでも、多様性をテーマに様々なアクションが行われたのも皆さんの記憶に新しいかと思います。

改めて考えると、私たちの生活はたくさんの多様性に包まれています。考え方や環境はもちろん、先ほど話題に挙げたLGBTもそのひとつです。

私たちは、それらの違いをあるがままに理解し、多様性を受け入れる必要があります。そうすることで、SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」が実現され、世界は平等に平和になっていくことでしょう。

さらに自身のお子さんがいるという方は、お子さんにもぜひこれらの多様性を理解できるように教えてあげてください。子どものころに触れた価値観は、一生のものとして根っこに残ります。ぜひ、多様性を認め、他者を大切に思うことができる子に育ててあげてくださいね。

いじめや虐待から子どもたちを守る

いじめや虐待は、私たち日本人に最も近いところにある暴力であり、差別です。

情緒がまだ成熟しきっていない子どもは、時に残酷な思考や行動を持ちがちです。子どもがいじめをしないように、またいじめられないようにするには、大人の行動や見守り、そして教育が大切です。

虐待に関しても同様のことが言えます。虐待をなくすために最も高い障壁となるのが、家庭という密室で行われることです。虐待が行われていたが、発覚したころには子どもは亡くなってしまっていた、というケースが日本でも定期的に起こってしまっています。これらの非常に残念なケースをなくしていくために、周囲の目と、親も含めた支援体制が必要不可欠です。

いじめも虐待も、「傍観者」であることが発見や解決を遅らせる大きな要因となっています。もしいじめや虐待の現場と思わしきシーンに出くわしたら、SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」という目標を今一度思い出し、勇気をもって関係機関に報告するようにしてみてはいかがでしょうか。

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」は私たち一人ひとりの行動がダイレクトに結びつく課題です

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」についてまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか。紛争や暴力、差別など、テーマとしても非常に重たくて解決が難しい内容であったと思います。

ですが、一般人である私たちレベルでも日々の活動からこの目標に役立つ行動があるとも思っていただけたのではないでしょうか。

世の中には残念ながら多数の差別も存在しますが、これらはひとりひとりが意識をして考えを改めていくことで解消し、世の中が平和に向かっていきます。

ひとりひとりの一歩から世の中を平和にして、SDGs目標16を達成しましょう!

ライター:相澤 かづき

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