
「持続可能な開発目標」SDGs。地球の環境を守り、人間の営みがこれからもずっと続いていくために行わなければいけない目標のことです。
今回は、SDGsの19の目標のうち9番目「産業と技術革新の基盤を作ろう」というテーマについてわかりやすく解説をしていきたいと思います。
世界が今抱えている問題から、実際に日本で行われているSDGs目標9にかかわる活動、そして私たちひとりひとりが行えるSDGs活動なども踏まえながら進めていきます。
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」とは?
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」とは、人類が発展し、かつ地球環境が持続可能な状態を維持できるためのベースを作り上げようという目標です。
ここでいう基盤とはすなわち、水道や電力などといった生活にかかせないインフラや、生活を便利にする情報技術のことを指します。
産業を発展させていくためには、上記のような基盤となるインフラの整備がかかせません。電力や水道がなければ産業は行えませんし、結果技術革新も実現ができないのです。
日本ではこのようなインフラは整備されていますが、世界レベルで見ればまだまだこのようなインフラ整備はできていない地域が多数あります。この問題を解決しようという試みが、SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」なのです。
SDGs目標9のターゲットを分かりやすく解説!
経済発展というものはどのようにして実現するのでしょうか。
近現代に急激な発展をした日本を含むアジアの地域を見てみると、戦後の急激な水道・電気・道路整備などのインフラの発達や、産業の活発化、そして技術革新がその要因として挙げられます。
その中でも、経済発展の礎となるインフラの整備は欠かせず、インフラが整っているからこそ技術革新も可能であるといっても過言ではありません。
急激な発展を遂げた都市部では、輸送やインフラが整備され、今もなお革新的な技術の発展や経済成長が見られますが、そのような国は世界レベルで見れば一握りと言えます。
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」では、持続可能な開発を促進すべく世界レベルでのインフラ整備と産業化を図ろうとしています。
そのための目標が以下の通りです。9.1,9.2といった数字のナンバリングが達成すべき目標です。9.a、9.bのようなアルファベットの並びが、達成のための具体的行動が記されています。
項目 | 内容 |
---|---|
9.1 | 全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラを開発する。 |
9.2 | 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030 年までに各国の状況に応じて雇用及び GDP に占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。 |
9.3 | 特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸与などの金融サービスやバ リューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。 |
9.4 | 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導 入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能 力に応じた取り組みを行う。 |
9.5 | 2030 年までにイノベーションを促進させることや 100 万人当たりの研究開発従事者数を大幅に 増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとする全ての国々の産 業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。 |
9.a | アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・ 技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラ開発 を促進する。 |
9.b | 産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国 内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。 |
9.c | 後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020 年までに普遍的かつ 安価なインターネットアクセスを提供できるようにする。 |
掲載元:9.産業と技術革新の基盤を作ろう | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
内容を要約すると、先進国は後発発展途上国が産業化をすべく、金融・テクノロジー・技術の側面から支援を行い、後発発展途上国においては、産業化を目指し努力をしていきましょうという内容になっています。
目指すべき期限は2030年。ここまでにすべての国でこれらのイノベーションを成し遂げなくてはなりません。
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」が必要な理由と現状の課題
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」はなぜ必要なのでしょうか。その理由はシンプルで、世界的にはまだインフラ整備が行われていない国が多数存在するからです。
インフラにもたくさんの種類があります。道路のような輸送や移動にかかわるもの、上下水道のような水にかかわるもの、明かりや自動車、家電などを使用する電気、これらのものはすべてインフラに含まれます。
ここでは、産業化に必要な観点からインフラ整備が必要な理由について述べていきます。
途上国・世界のインフラの現状
そもそも、世界にはどの程度インフラが整っていない国や地域があるのでしょうか。現在、世界には26憶人もの人が電気を使えない状態で生活しており、中には安定した水資源を得られない状態で生活している人もいます。
電気が使えないことによる生活の不便さはもちろん大変ですが、特に水資源が枯渇している地域は特に深刻です。水が安定的に得られないことは、生命維持にもかかわってくる問題だからです。
特にインフラ整備が整ってない地域として、アフリカ諸国が挙げられます。そのため、SDGs目標9のターゲットにも、具体的にアフリカをターゲットとした目標が掲げられています。
水に関するインフラの現状
水資源の確保は、衛生環境や生命維持、そしてSDGs目標9において非常に重要な課題です。ユニセフの見解では、水資源の確保状況については4段階の評価が存在します。それは以下の通りです。
- 安全に管理された飲み水が利用できない
- 基本的な飲み水が利用できない
- 限定的な飲み水が利用できない
- 改善されていない水源しか利用できない
1で述べられている「安全に管理された飲み水」とは、先進国で行われているような、上下水道などが整備されており、水質が安全で衛生的な状態のことを意味します。これらを得られない人は世界に20億人以上いるといわれています。
2の「基本的な飲み水」とは、居宅から30分以内にある改善された水くみ場や供給サービスの拠点があることを意味します。これがなされていない状態とは、すなわち水源が自宅から遠いということや、著しく不便な状態にあるということです。2の状態にある人は世界に8億人程度、3の状態の人は約2億6000万人ほどいるといわれています。
1,2,3のどれにも当てはまっていない人は約1億5000万人いるといわれていますが、これは非常に深刻な状態です。衛生的で問題のない水を得ることができていないので、経済発展以前に生命の危険のある状態に置かれています。
電気に関するインフラの現状
電気の普及は産業化において欠かすことができない要素です。しかし、世界ではまだ8億人以上の人が未電化エリアに暮らしています。
この未電化エリアはアフリカや南アジアといった地域に多く、前述の安全な水を利用できないエリアとほぼ同じです。
未電化エリアは、ただ単に不便であるということ以外にもデメリットが存在します。たとえば、暖を取るにしても明かりを得るにしても、未電化エリアであれば森林を伐採して燃焼させるなどの方法で行うしかありません。
これは森林減少や砂漠化などの深刻な問題につながるため、SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」の観点からも解決が急がれます。
交通に関するインフラの現状
交通にかんするインフラの現状は、先進国と発展途上国の2つの面から問題を考える必要があります。
まず、発展途上国においては、インフラが整備されていないことが問題となっています。
例えば先進国においては、農作物を収獲したら、整備されたインフラを利用して、鮮度を保ったまま各地で売りさばくことが可能です。反面、発展途上国においてはたくさんの農作物をとっても、インフラが整備されていないため収穫物が各地に届くことなく悪くなってしまうという問題を抱えています。
先進国では、自動車が多くなりすぎたとこによる渋滞や排気ガスによる大気汚染が深刻です。これらは地球温暖化の原因にもなりかねません。そのため、電気自動車などの排気ガスを出さないエコな自動車の開発や、車に頼りすぎない社会の仕組みを作る必要があります。
インターネットに関するインフラの現状
インターネットの普及による恩恵は多大であることは皆さんもご存じかと思います。
調べたいことも検索をすればすぐに調べることができるし、最新のニュースも調べたいときに調べることができます。インターネットの普及は、この情報化社会において欠かすことが出来ないテクノロジーといっても過言ではありません。
また、インターネットが普及することによって、様々な手順が短縮化されます。今では対面でなくとも顔を見ながら会話ができますし、資料なども簡単に伝送することが可能になります。産業化を推し進めていくためにも、インターネットにかんするインフラ整備は大切になってきます。
産業基盤が整うことのメリット
世界が豊かに発展していくために必要なものはなんなのでしょうか。その答えともいえるものがインフラです。インフラは産業・生活などに大きくかかわる基盤のような存在だからです。
例えば、電気も水もないような困窮した生活を送っていた場合、明日をより発展的な生活にしようとか、未来の生産性について考えてたりすることは難しいのではないかと想像できます。
明日の水に困らない、電気がすぐに使える、といった状態であるからこそ、人は理想の生活のために努力ができるのであり、結果生産性を高めるまでに至れるのです。
個人の生産性が上がれば会社の業績もあがります。業績が上がれば給与も満たされたものになっていきます。給与基準が高くなれば、子供への教育水準もあがり、地域の水準がさらに上がっていくという好循環を生むのです。
だからこそ、産業基盤が整うことは、実に多岐にわたってメリットのあると言えます。
世界が発展していくために必要な目標
ここまで、産業の発展について説明をしてきましたが、その発展は必ずしも手段を選ばずに行っていいものではありません。SDGsはあくまで「持続可能な開発目標」だからです。
産業が革新的に進歩したからといって、地球環境に悪影響であったり、資源を食い尽くしてしまうようなものであったら意味がありません。ですが、今までの過去を見る限り「産業の発展と資源維持は同時には成り立たないのでは?」と思う気持ちはわかります。
だからこそ、技術革新=イノベーションが必要になってくるのです。
自動車を例に話せば、現在はではカーナビで渋滞緩和のためのルート変更を提案したり、ガソリンを使用せずに走る電気自動車が開発されています。ガソリンで走る車であっても、省エネ性能が向上している車がどんどん発売されていますよね。
このように、今後世界では「限りある資源を大量消費してきた過去」から決別をしなればいけません。
そのためにわたしたちは、便利さだけを追求した産業発達から脱却し、持続可能な産業な発展を目指さなくてはいけないと言えるでしょう。
各国で行われているSDGs目標9への取り組み
世界各国で行われているSDGs目標9への取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。
その答えはずばり、水に関する支援です。
安全な水の確保は、何においても最重要な課題です。安全な水が用意に得ることが出来なければ、水を得るという行為そのものが日々の最も過酷な業務となってしまいます。それは結果として、子ども世代の学習不足や産業の発展などに歯止めをかける要因となってしまいます。
そのため、多くの国がアフリカや南アジアなどへの水のサポートを行っているのです。
例えば、アフリカのガーナで行われている「walty」の導入。
waltyとは、ソーラー充電した電気でろ過装置を動かし、さらに余った電力でwifiや蓄電器としても使用できるマルチなデバイスです。これによって発展途上国の人たちは少ない労力で水や電力を手に入れることが可能になります。
こういった取り組みをどんどん増やしてき、2030年までにすべての国と地域を産業化することがSDGs目標9のゴールです。
日本の企業によるSDGs目標9への取り組み事例
SDGs目標9への日本の企業の取り組みは、どのようなものがあるのでしょうか。
「Zホールディングス株式会社」のSDGs目標9への取り組み事例

photo by Zホールディングス株式会社
前身がヤフー株式会社であるZホールディングスは、ZOZOやアスクルなど、多数のECサイトなどを運営する巨大企業です。情報化社会で成果を出し続けている同社の取り組みは以下の通りです。
- 情報技術社会の発展
Zホールディングスでは、SDGsへの貢献として「4つのUPDATE」という領域に分類し、それぞれ取り組んでいます。それらは「情報技術社会の発展」「災害・社会課題への支援」「誰もが活躍できる社会の実現」「持続可能な社会への挑戦」ですが、SDGs目標9に最もかかわりの深いものが「情報技術社会の発展」です。Zホールディングスでは、安心安全な情報技術社会の実現に向け、データセキュリティとネットワークの信頼性を高め、だれもが安心して情報技術を享受できる未来を創ろうという目標を立てています。
社名 | Zホールディングス株式会社 |
---|---|
本社所在地 | 東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井タワー |
事業内容 | グループ会社の経営管理、ならびにそれに付随する業務 |
公式サイト | https://www.z-holdings.co.jp/ |
「株式会社みずほフィナンシャルグループ 」のSDGs目標9への取り組み事例

photo by みずほFG
日本を代表するグローバルで開かれた総合金融グループを目指すみずほフィナンシャルグループは、だれもがしるみずほ銀行を運営しているグループです。
みずほフィナンシャルグループでは金融の観点からレジエントリな社会インフラの構築を目指していますが、その具体的な活動については以下の通りです。
- IT基盤
加速度的に発達する技術に対応すべく、みずほフィナンシャルグループでは、「MINORI」という新たな感情システムを構築しています。このシステムはシンプルな構造であるがゆえに、支店が異なっても処理を進めることができ、さらにAPI等を通じて外部のフィンテックなどのと連携を行えるというモデルで開発が進められています。これにより、より即時性のあるやりとりが可能になるため、次世代の情報インフラとして非常に有用なモデルとなることが期待されています。 - レジリエントな社会インフラ整備
レジリエントとは「強靭な」という意味です。みずほフィナンシャルグループでは、強靭なインフラ整備を促進するために、この分野に対する資金提供やコンサルティングに大きな力を注いでいます。インフラ開発は資金がなくては進みませんので、こういった金融面からのサポートは非常に有力です。
社名 | 株式会社みずほフィナンシャルグループ |
---|---|
本社所在地 | 東京都千代田区大手町1丁目5番5号(大手町タワー) |
事業内容 | グループ会社の経営 |
公式サイト | https://www.mizuho-fg.co.jp/index.html |
「株式会社シーアールホールディング」のSDGs目標9への取り組み事例

photo by SDGsへの取り組み | シーアールグループ
シーアールホールディングは物流サービスを行っている企業です。「物流事業を通じて社員の成長と会社の発展を図り、社会に貢献する幸せの総和こそ企業価値とする」という基本理念を掲げています。
物流は、交通系のインフラに大きくかかわってくるだけでなく、さまざまなモノの輸送にも関係してきます。だからこそ、技術革新には欠かせない要素です。
そんな大切な輸送にかかわるシーアールホールディングのSDGs目標9への取り組みを見てみましょう。
- システム物流の提供&物流オペレーション能力による生産性向上と継続的な価値の創出
シーアールホールディングでは、物流現場の状況を「視える化」することで、生産性を向上することを目指しているようです。グループ創立50周年で培った物流のノウハウとロボティクス技術でお客様をサポートし、よりよい物流サービスを提供。産業の発展に貢献をしています。
社名 | 株式会社シーアールホールディング |
---|---|
本社所在地 | 岡山県岡山市中区平井6-15-34 |
事業内容 | 物流サービス |
公式サイト | https://cr-logi.co.jp/ |
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」に対して私たちができること
SDGs目標9の達成に向けて、私たちはどのようなことに意識を向けていけばよいのでしょうか。インフラ整備を行うといっても、個人では限界がありますし、産業革命を起こすというのもスケールが大きすぎてピンとこないかもしれません。
では、少し見方を変えてみて、インフラを維持するための活動を行ってみてはいかがでしょうか。意外と簡単にSDGsの活動に参加ができるかもしれませんよ。
災害時に身の回りのインフラに負荷をかけないための防災グッズの準備をする
私たちの住む日本は、言うまでもなく災害大国です。
地震・台風・猛暑・水害・豪雪など、年間を通してたくさんの自然災害が起こる地域です。特に地震などの大規模な災害時には、インフラが深刻なダメージを受けてしまう可能性があります。
そんな時に役に立つのが災害用備蓄や事前の備えです。
災害がいつ起きても、自宅で数日間は自力で命をつなぐことができる環境を常日頃から整えておくことで、災害時の限りあるリソースを削ることがなく命を守ることができます。
公共交通機関を利用する
都市部においては、自動車による排気ガス問題や渋滞による非効率なエネルギー利用が問題になっています。
今後、インフラを持続可能な形で保持していくためには、現在のような自動車の使い方ではすぐに底をついてしまいます。これを防ぐために、なるべく環境負荷を避ける公共交通機関を利用したり、短い距離ならば自転車や徒歩で移動をすることでも簡単にSDGs目標9への貢献となります。
SDGs目標9は、限りある資源をまもりながら世界をより便利にするための道
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」についてまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか。
普段何気なく享受しているインフラや技術などが、かならずしも無限に使えるものでないことと、世界にはまだまだ電気や水の確保で苦しんでいる方がたくさんいることを感じていただけたかと思います。
SDGs目標9は、発展途上国のインフラ整備をサポートする目標であり、大量生産大量消費が骨身に染みてしまっている都市部の人々に限りある資源の大切さを知り行動を改めてもらうための目標でもあります。
まずはひとりひとりができる簡単なことから、SDGs活動に参加をしてみるのもいいかもしれません。